2008年(平成20年)6月22日  

  上海便り−現代床屋事情  


 労働力が過剰な地域や町などではどうも理容(髪)店、美容院などのサービス産業に従事する人達が人口比多くなる傾向にあるようです。以前勤務した小樽という小さな町にやたらと理容(髪)店が多いことに驚いたことがありました。上海の街中でも理容(髪)店、美容院の類の店が目立ちます。上海では(あるいはアジア地域共通かも知れませんが)男女別々の日本でいう理髪店、美容院の区分けはなく、同じ理容店で、男も、女も整髪をしてもらいます。上海でいう美容院は美顔などのためのマッサージ店をいいます。店の中で整髪してもらっている席の両サイドの席に若い美女がいることも稀ではなく、結構楽しいときもあります。理髪師は男女両方の整髪が出来なくてはならず、同時に男女二人の客の整髪を受け持つこともありますから、いつも店の中をいそがしく駆けずり回っています。理髪師の免許や国家資格のようなものがあるのだろうと思いますが、それにしても料金には公定価格らしきものはなくそれこそ街中を歩いていると、割安な店では下は整髪5元程度から始まって料金表を夫々表に張り出しています。一方高級店では料金に上限なく、客との相対で決めているようです。要するに料金はピンキリとなっているので、これをみると免許などは本当にあるのかと疑いたくもなります。
 経済発展にともなって若者の収入レベルもどんどん上がっているので、特にファッションにうるさい若い男女性達は整髪のための支出を厭わず、かなりの出費も平気のようです。母親が下町の店で5元、10元の整髪で我慢しているのに、娘は街中の高級店で800元を払って最新のファッションスタイルを取り入れたりするのも最近ではごく当たり前のことになっているようです。収入レベルからみれば800元は少々大変かなと思いますが、美のためなら何のそのということになるのでしょう。
 理容師は少しでも高い収入を得るため店を選択します。そのため店から店へと職場を変えて一箇所に定着しないこともざらです。店との契約関係もあってなきに等しいのかも知れません。小生も、行きつけていた腕のよい理容師が半年おきぐらいに店を変え、そのたびに新しい店を連絡してくるので、その理容師のあとをつけてこちらも転々とし、何と4軒目の店まで付いて行ったことがあります。こちらも人が良いというか、半分は興味本位ということもあったのですが、理髪師は自分についた客も一緒に引き連れて次の店に移動していくという行動パターンがよく理解出来ました。腕に自信のある理容師は若いときには一匹狼のように自分の挟みなどの商売道具だけを持って、よりよい収入を求めて店を転々とするようです。
 最もこの傾向は、何も理容師に限らず、20代までの若者共通の現象で、キャリアーアップ、収入アップを目指して、会社を換えることを絶えず意識しながら、前より少しでも高い収入が保障されれば、比較的簡単に転職してしまう傾向があります。このため20代の定着率が低く、どこの会社でも悩みの種になっていますが、理容師の場合もこの一つといえるのかも知れません。  

了