2008年(平成20年)7月1日  

  上海便り−最近の中国食品事情  


毎年2桁の著しい経済成長と所得増にともなって中国人の食生活の変化にも目覚しいものがありますが、最近の食品事情の一端を、日系食品業界各社から見た目で紹介します。
〔ビール〕既に生産量、消費量ともに世界一で、毎年2桁の勢いで伸びている。一人あたりの年間消費量も2007年には世界平均の27Lを超え、27.6Lになった。地球上の最後のビール激戦区とあって、各国の大手ビールメーカーが陣取り合戦に競って参入、戦を繰り返している。消費量には地域格差もあり、ハルピンは一人当たりで世界のトップクラスなのに対し、上海、華東地域は発展途上にあり、今後華東、西部地域などでまだまだ需要が伸びると期待されている。上海だけはサントリーが圧倒的なマーケットシェアーを保持している。純生タイプを求める本格派が増え純生が急成長。
 中国では面白いことにビールは、比較的アルコール度が低く、瓶は透明タイプ、そして小瓶が好まれる。これはビール文化が根付くにしたがい、若者の間で、宴席で一度に何本のビールを飲んだかを競い合い自慢することが流行っているからといわれる。
〔ワイン〕消費量はフランス、アメリカに次ぎ既に世界3位。生産量も年々伸び、フランスなどから技術導入し、品質も急激に高まり、高水準のものを生産出来るようになってきている。特に上海の若者には、招興酒や白酒などよりも赤ワインを好む習慣が根付きつつある。宴席では東北地方では未だに白酒の乾杯が続くが、華東地域や南部では最近は昔からの紹興酒に加え、ビール、赤ワインなどの乾杯となる。
〔チョコレート〕急激に消費量が増え、世界のチョコレートメーカーが挙って参入。特に日系の有力メーカーの揃い踏みとなり、マスコミまで動員して競争を展開。日系どうしの競争も激しい。日本ではミルク入りの甘いタイプの製品が好まれるが、中国では苦味の効いたタイプが好まれていて、国によって嗜好の違いがあることが分かってきた。
〔パン・麺〕 中国は年間小麦消費量約1億トン(人口13億人)、日本は同じく550万トン(1億2千万人)なので、一人当たり小麦消費量(実際には飼料用、工業用などもある)を単純に試算すると中国の方がかなり多いことになる。これは東北地域でまんとうとか麺、餃子などを多く食したり、一部飼料用もあるためとみられる。
 近年、大都市のパン需要は、台湾系、日系ベーカリーなどが進出、品質の良いパンを供給するようになったため年々需要が増えてきている。特に最近では日系ベーカリーが力を入れている高級パンの人気が高まっている。上海では、スーパーなどでは食パン一斤3?5元程度なのに対し、日系ベーカリーでは14?17元だが、それでも中間所得層や若者中心にやはり日系ベーカリーのパンは旨いということで売れ行きが伸びており、同時にこれがパン消費全体を牽引している。今後このような若い人達のパン志向が全国に拡大していくと、中国全体の小麦粉消費量もさらに増え、目下ほぼ自給自足の小麦需給にも不足が生じ、輸入拡大による世界需給へのインパクトも懸念される。
 ただ小麦粉種類の選択の幅が狭いため、一般的にはパンも麺も品質では日本より劣る。
〔魚〕これまで川魚中心の食生活だったが、最近は海の魚も食するようになってきているため、消費量は年々伸びている。魚消費量は日本、アイスランドが年間一人80kg前後で世界一で、世界平均は現在18?20kg程度だが、中国は既にこれを上回り33kgまで増えてきている。海魚をもっと食するようになってくると、海の魚をめぐる各国間の争奪戦が今後ますます激しさを増すことが予測される。日本などでは、最近中国人が一斉に「まぐろ」を食べ始めたというような脅威が喧伝されることが多いが、事実は、一部の富裕層や外国人(特に日本人)が主に食べているのであり、回転すしなどを除けば一般の人達が日常そう多く食べているわけでは必ずしもない。しかし徐々にでも海魚消費が増えれば世界需給がますますタイトになることは間違いない。
〔乳製品〕もともと中国人は乳製品には抵抗感があったようであるが、最近では若い人達を中心に特にヨーグルト、牛乳などの消費が増えている。ヨーグルトは液状のものが好まれ固めのものは少ない。牛乳は高級品の需要が高まり、某日系乳業メーカーは毎週一便福岡から上海に生乳(牛乳)をチルドコンテナー便で海上輸送している。価格は国内産に比較、2倍、3倍だが順調に売り上げを伸ばしている。中国産の安い牛乳の中には成長ホルモンの残留があるものがあり、これを避けるため高級品指向が高まっている(日本でも牛肥育に成長ホルモンを与えるが搾乳段階で残留ホルモンを除去するとのこと)。一般的に中国の女性の初潮が早めなのは残留ホルモンのためだといわれている。
  チーズ、バターには未だに抵抗感があるようだが、ピザの人気が高いため、チーズ消費はピザの形で食され伸びている。中国人が本格的にチーズを食べ始めたら世界のチーズは地球上からあっという間に無くなってしまうといわれ、他の国にとっては中国人がまだあまりチーズを食べないことが幸いしているとのこと。
〔コンビニ食品〕日系のコンビニ(セブン、ローソン)が参入して、売れ筋になったものが幾つかある。一つは「おにぎり」で、当初売り出したときは、中国人はもともと温かいものしか食べないのでレンジで過熱して売り出したが、いまでは加温なしでそのままの「おにぎり」が一つのコンビニで何種類も売られている。
 「おでん」もいまや四季を問わず年間を通じた定番の人気商品となっている。「おでん」などはともと昔から中国にもありそうなものだが、実はさに非ず、中国人にとっては新しい商品だったようで、いまやどのコンビニ内でもレジの脇に大きな長四角の鍋をおき、中では一つ一つ「おでん」の種類の名を焼印した串にさした「おでん」が煮えたぎっている。一串1.5?3元。指差して注文すると、数だけ紙コップに入れ、それに汁を注ぎ足してくれる。特に「おでん汁」に、店によりいろいろ特徴を持たしており、われわれが食べても「おでん」も汁も結構いける。
  コンビニ弁当もやや中国人向け味付けがまさるが、年々旨くなり、一食7?12元。
〔和食レストラン〕いまや上海に830軒を数え、世界一、他国料理を圧倒。この内日本人経営者、コックがいるのは一部(3割程度か)に留まっている。一般的に食材は豊富、品数も多く、味も良い。値段は高いが、和食が中国人の食生活に急速に浸透している。  

了