10期生 宝田 裕介
ビール産業における企業の広告効率性評価と広告コンテンツ評価に関する実証分析
近年ビール市場では新製品投入が盛んに行われている。私たち消費者が、これらのビール類商品を購入する際に、広告の果たす役割はいかなるものであるのか?本研究は、大手ビール会社4社の広告効率性を評価したうえで、その効率性に影響を与える要因を分析することを目的としている。
第1段階の分析として、DEAを用いて企業ごとに媒体別の広告効率性評価を行った。分析結果より、出荷数量の多い企業では広告効率性が高い値を示す傾向が見られた。また、スポットCMと新聞広告の効率値が対照的な動きをしているが、この理由として、テレビ広告型商品と新聞広告型商品の違いをモデルに反映できなかったことが原因であると考えられる。媒体間の性質の違いや企業の媒体戦略の意図をモデルに反映していくことが今後の課題となるのではないだろうか。
第2段階の分析として、第1段階で算出した広告効率値と、広告コンテンツ評価の指数として算出したCM好感度指数相対値の2つを用いて分析を行った。分析手法はTOBITモデルを用いた。分析結果より、CM好感度指数相対値が広告効率性に影響を与えることがわかった。この結果を通じて、ビール会社の広告コンテンツ戦略が、広告効率性に十分に反映されていることがわかった。
今回の研究では、「広告効率性の高い企業ほど出荷数量は多い」「CM好感度指数相対値が高いほど、TVCM広告効率性は高くなる」という2つの仮説を検証した。今後の研究では(1)ビール市場・発泡酒市場・第3のビール市場についてそれぞれ比較しながら分析を行う、(2)広告コンテンツ評価の軸を詳細にすることで、データの制約を越えた研究を行う、(3)広告効率性に影響を与える他の要因を検証する、といったことを主軸としたものを期待したい。