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10期生 柳澤 知里

ブランドの違いによる耐久財価格への影響
―液晶テレビ市場における実証分析―

 私たちは何を基準にして、数あるモノのなかからひとつの商品を選択するのだろうか?それは、品質やブランド、価格、広告など、人それぞれ違うものである。その中でも、今回はもっとも明瞭な「価格」に注目した。価格は何によって決められているのだろうか?同じ製品特性でも、ブランドにより価格に何らかの違いがあるのだろうか?本研究では、ブランドや発売時期、製品特性などの価格への影響を、液晶テレビ市場を対象に分析していく。
 まず分析1では、製品の発売時価格の違いをみる。ブランドダミー、生産ダミー、パネル調達に関する変数を別々にモデルにいれ、製品の特性に関する変数でコントロールしている。結果は、東芝の製品が他と比べて発売時の価格が低く、ソニーの製品は高い、その他ではブランドによる違いはないことがわかった。また、1インチあたりの消費電力が大きい製品、フルハイビジョンに対応している製品は有意に発売時の価格が高くなった。一方、液晶テレビとプラズマテレビの生産の如何や、製品の発売時期、液晶パネルの調達方法の違いによっては、特に価格への影響がないという結果であった。
 次に分析2では、発売時の価格と現在の最安価格との変化についての違いをみる。ここでは、同様にブランドダミー、生産ダミーを用いるほかに、それぞれの発売時期との交差項や他製品の参入に関する変数も加えている。まず、東芝製品は発売からの価格の変化が小さく、特に新しいものほどそれがいえるという結果であった。その他のブランドでは、ブランドや発売時期による影響はないものとされた。製品特性では、1インチあたりの消費電力がプラスのいう結果であった。また、発売後に他社の同様の製品の参入のあった製品では、有意に価格が低下しやすい一方で、自社製品のモデルチェンジでは既存製品の価格にあまり影響がないことがわかった。そして、企業の生産ダミーについては有意な結果は得られなかった。
 ただし、本分析で用いた「価格」は日々刻々変化するものであり、また、液晶テレビ市場も今後さらに成長していくことが予想される市場である。そのため、今後の動向に注目していく必要があるといえる。

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