template

Articles

11期生 三澤 慎也

取締役会における社外取締役の導入要因

 本論文は、コーポレートガバナンスの中でも近年話題になっている社外取締役に焦点を当て、その導入要因を実証的に分析したものである。
 社外取締役は経営の執行と監督の分離を強化することが企業に求められる中で、取締役会の監督業務の強化を目的として導入される。求められる役割は、株主の代理人として、業務を執行しない立場から経営判断を行うことである。
 今日、日本において社外取締役をその構成要素とした取締役会は広範囲に採用されつつあり、2007年度時点では東証一部上場企業の約45%が社外取締役を導入している。経済産業省や金融審議会も、上場企業を対象に社外取締役の導入をルール化しようとする案を提示している。しかし社外取締役の導入の是非を検討する前に、どのような企業が社外取締役を導入し、その結果企業パフォーマンスにどのような影響を与えるのかという事が明らかにされていない。
 よって、本論文では社外取締役の導入要因を明らかにし、日本における社外取締役に関する研究に新たな道筋を立てることに加え、社外取締役導入のルール化をめぐる議論に橋渡しを行うことを目的としている。
 実証分析に当たっては「代表取締役社長の在任期間」、「取締役の交代の速さ」、「関連会社数」、「外国人持株比率」、「執行役員制度導入状況」と言った仮説を示す説明変数に加え、「子会社」、「外資系企業」、「企業規模」、「企業年齢」のコントロール変数を用いて、被説明変数である「社外取締役導入状況」との関係を分析した。対象企業は東証一部上場企業250社、分析年度は2003年度である。
 分析によって「取締役の交代が遅く、執行役員制度を導入している企業が、社外取締役を導入している」ことが明らかとなった。この結果から、社外取締役導入には企業の外部ガバナンスよりも内部ガバナンスの方が大きな影響を与えていることが言える。また執行役員制度の導入といった、内部ガバナンスに対する改革意欲が高い企業が社外取締役を導入するのかもしれない。

Back