11期生 植木 大造
同質的行動における先行者と追随者の優位性比較
―ポイント市場から見る実証分析―
本研究のスタートラインは、近年のポイント市場の急速な拡大にあった。2005年度に発行された企業ポイント総額は約4500億円と推計されており、2012年度には7800億円超まで達すると見込まれている(野村総合研究所、2006)。また日本の企業ポイントは海外に例をみないほど発展したモデルであり、将来的には日本初の新しい販促ツールとして海外展開することにより、日本企業の国際競争力の強化に活用することができる(企業ポイント研究会、2007)など、企業ポイントが企業にとって重要な戦略であると注目されるようになっている。
そのようなポイント市場の中で近年ある一つの動きが注目を集めるようになった。それが企業ポイントのANA、JALといったマイレージへのポイント交換である。すなわち、自社で発行したポイントをマイレージポイントに交換するというANA、JALへのポイント提携がポイント市場で急速に拡大してきている。しかし、一方で2006年4月にドコモがANA、JALへのマイレージ交換を廃止したように、自社ポイントのマイレージへの交換の見直しを迫られる企業も出始めており、ポイントのマイレージ交換の是非が問われるようになった。
そこで、是非が問われるANA、JALマイレージとのポイント提携が果たして株式市場ではどのように評価されるのであろうか、と疑問に感じたのが今回の研究のはじめの動機である。すなわち、ANA、JALマイレージとのポイント提携を行った企業を投資家は評価するのかどうかを今回の研究ではじめに明らかにする。
さらに研究を進めていく中で、同業種のライバル企業がマイレージとのポイント提携を行うと他のライバル企業もそれに追随してマイレージとのポイント提携を行っていることに気がついた。本研究ではこれを同質的行動と呼ぶが、一般的に同質的行動には賛否が分かれる。すなわち、同質的行動には「模倣による横並び」といった批判や、逆に激しい競争の表れであるとして評価する2つの見方がある。同質的行動については日本企業を対象にした実証研究はあまりなく、検討すべき領域である。
そこで、本研究ではポイント市場でみられる企業のマイレージへのポイント提携を条件付きで同質的行動と定義し、それを先行者と追随者に分類し比較分析を行うことで、どちらに優位性があるかを明らかにする。これによって同質的行動について多角的な観点からの考察を行う。