11期生 吉田 嘉威
特許侵害訴訟の経済分析
―企業間訴訟における勝敗の要因―
国際戦略上知的財産の重要性が高まり、知的財産権には確固たる保護が必要になる。本来公共財的性質をもつ情報や知識は権利として保護しなければ、研究開発の成果が保障されず研究が過小になりやすい。そこで政府は特許保護を強化するプロパテント政策を推進することで、研究開発主導の産業構造を確立せんとしている。
しかしその反面、特許による保護は知財紛争を引き起こしやすい。研究開発は複数の既存技術を組み合わせて生まれるため、特許による過度な保護が詩的財産へのアクセスを阻害し、逆に研究開発が行いにくくなるという特許の藪2)という状況をも生み出そうとしている。そのような状況では知的財産紛争に関しても企業の合理的選択が必要とされる。紛争の回避手段を与えられた状況から選択し速やかに問題を解決することが求められるのだ。そのような解決策のひとつに訴訟がある。判決には拘束力があり、紛争を確実に処理することができる。しかしリスクの多い訴訟は解決手段としては敬遠されがちだ。それでは訴訟という法現象を企業はどのように考え行動するのか。ここでは特許訴訟を企業戦略に絡めて実証的に分析する。