12期生 草場 慶太郎
純粋持株会社制採用による企業行動とパフォーマンスの変化
昨今、純粋持株会社制を戦略の一環として採用する企業が増加しており、純粋持株会社制への以降は製造業、大企業にとどまらず様々な業界、規模の企業で見られる。①純粋持株会社はどのような特徴・機能を有しているのか、②どのような企業が純粋持株会社制を採用するのか、③純粋持株会社制採用後に企業はどのような行動を実施し、パフォーマンスにどのような変化を与えるのか、本稿では以上の3点が問題意識となっている。
そして純粋持株会社制のメリットとして①M&Aが比較的容易になる、②経営の効率化によってパフォーマンス向上する、という2点が挙げられる。そこで本稿では、1997年の独占禁止法改正以降における、純粋持株会社制を採用している東証1部上場企業を対象とする実証分析を行った。検証した仮説は、①純粋持株会社制採用企業はM&Aを積極的に実施する、②純粋持株会社制を採用することで企業パフォーマンスは向上する、の2点である。
分析の結果、純粋持株会社制採用企業はM&Aを積極的に実施することが検証された。これは純粋持株会社の特徴を生かし、経営陣はM&Aによる外部成長を積極的に行っていることが考えられる。一方で、純粋持株会社制を採用することで企業パフォーマンスは向上することは検証されなかった。この結果から、事業のリストラクチャリングの容易性を活かし、積極的に企業の買収・売却を行い、グループ横断的な戦略を立案し実行している一方で、各事業会社の独立性と引き換えにこれらのメリットを十分に享受できていない可能性があると考えられる。純粋持株会社制採用の鍵は、合併・買収によるシナジー効果が十分に発揮されていない、責任と権限の境界線における意思決定の混乱・グループの求心力低下といったデメリットをいかに抑えるかが重要だといえる。