13期生 荒川 秀一
韓国財閥(Chaebol)の収益性に関する実証分析
-戦前日本の財閥経営との比較-
本論文は日本の財閥系企業に関する研究を参考にして、韓国経済の根幹を為す財閥(Chaebol)系企業の収益性と危機前後の変化について実証的に分析している。総資産額5000億won以上の上場企業をサンプルとし、アジア通貨危機と持株会社解禁の前後の変化をみるために、1993~1996年と2000~2003年の2つの期間に分けて分析した。企業パフォーマンスの指標としてはROE(株主資本収益率)を用いた。
この研究において最も重要な点は、韓国財閥の収益性を見るだけでなく、マクロデータを用いて「発展途上産業」を自ら定義して財閥系企業との相乗効果を確かめることにある。本論文では各産業の産業別売上高増加率をその産業の産業成長率とみなし、危機後も持続的に成長している産業を絞り、さらに政府からどの程度の介入・支援を受けているかを踏まえて発展途上産業を決定した。サンプルを発展途上産業と非発展途上産業に分け、財閥ダミーの効果を比較した。
本研究から、危機前には財閥系企業は非財閥系企業と比べて非効率的な経営をしていたこと、危機後は効率性に関して財閥系企業と非財閥系企業の間に統計的に有意な差がなくなったこと、財閥系企業と発展途上産業の相乗効果は危機後のみ有意であることが実証された。
今の韓国の財閥系企業の業績が良いように見えるのは、もともと財閥系企業は非財閥系企業よりも効率的だからではなく、むしろ政府の強力な支援のためである、と考える。韓国の財閥系企業は、戦前の日本の財閥系企業のようにガバナンスによって効率性を高めていくべきであると主張したい。財閥系企業自身が金融危機で学んだガバナンスの重要性を認識し、さらに持ち前の迅速な意思決定が加われば韓国経済はより活性化していくのではないか。日韓の産業が互いに刺激し合い、成長することで「強いアジア」を築き、両国がそれを支える中心的役割を果たすことを強く願っている。