13期生 豊永 厚暢
携帯電話への機能評価の国際比較
—ヘドニック・アプローチによる実証分析—
現在、携帯電話はナンバーポータビリティ制度や販売奨励金の廃止、スマートフォンの普及に伴って、私達生活者のほとんどが当たり前のように所持する世の中となった。2010年9月末の携帯電話の加入者数をみると、総計約1億19万加入となっており、対人口比で約88.3%もの国民が携帯電話などを所持している計算となり、今も一人一台に迫る勢いで加入者契約数は増え続けている。その反面、ほとんどの国民が携帯電話を所持している日本市場は成熟しているとも言われ、国内の多くの携帯電話端末メーカーは海外展開を迫られている。しかしながら、国内の端末メーカーの海外進出は近年不振に終わっており、その理由の一つとして考えられているのが、日本の携帯電話の多機能化、いわゆるガラパゴス化である。
そこで、本研究ではガラパゴス化の要因の一つとして考えられている日本国内と諸外国との間での異なる品質や機能要求、まったく異なるニーズといったものが実際に存在するのかどうかを調べる。ヘドニック・アプローチを分析手法として用いて日本の携帯電話の機能評価をして、アメリカの携帯電話と比較することで日本人特有の趣向の存在の有無を検証した。分析結果としては、カメラ画素数などのいくつかの機能においては日米で同様に正に有意となる反面、その他のいくつかの機能においては片方の国でのみ正や負に有意となった。
これらの結果を注意深く考察することによって、日本人が重要視する携帯電話機能に影響を与えるのは、日本人特有の趣向というよりも、携帯電話業界で影響力を強く持つ通信事業者(キャリア)の販売戦略であるということが導き出された。