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15期生 丹羽 誠

オープンスカイ政策が消費者に与えた影響
-日韓オープンスカイ協定の計量分析-

 2007年に閣議決定されたアジア・ゲートウェイ構想にあるように、日本が持続的に成長していくためにはアジアの成長を取り込む必要があり、そのインフラとして航空サービスの利便性向上や国際的な競争力の強化が求められている。本研究はその目的を達成するために実施されたオープンスカイ政策(指定航空企業の廃止や便数制限の廃止といった規制緩和を行う政策)が利用者にどのような影響を与えたのかをDID(差の差)分析を用いて実証分析したものである。本研究における独自性は、①日本で行われていなかったオープンスカイ政策の計量的な分析であること。②先行研究で考慮されていなかった利便性について考慮すること。③先行研究の理論を導入し国際航空運賃のデータを現実の価格と近似させることの3点である。分析対象は2007年に始まった韓国とのオープンスカイ政策を対象とし、入手可能で一番サンプルサイズの大きい日本航空の2004年から2011年までの運賃データを用いてパネルデータを作成した。被説明変数には航空運賃や旅客数、利便性(運行頻度)、LCC参入ダミーを用い、オープンスカイ政策による影響を推定した。分析の結果、オープンスカイ政策実施による運賃や旅客数への有意な結果はみられなかったが、LCCの参入が増加したことが明らかになった。オープンスカイ政策は指定航空企業以外の参入を促進し、利用者の選択肢の増加をもたらしたといえる。一般的にはオープンスカイ政策によって新規参入が起こり競争によって運賃が低下するとえられているが、本研究の結果ではLCCの参入は促進されても運賃は低下していない。この理由として3つの可能性が考えられる。空港容量の制限によって企業が便数を増加させなかった可能性、LCCが参入したことで新規需要が創出された可能性、大手ネットワークキャリアとLCCにおける棲み分けによる可能性が考えられる。

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