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15期生 櫻井 秀介

新規株式公開と企業成長

 昨今、新規株式公開(Initial Public Offering 以下IPO)への関心が集まっている。そのような中で、日本でのIPOに関する研究においては、IPO後の成長を分析する際に株価を用いるものは多く存在するが、売上高や利益といった企業の実際の経営成果を用いて研究を行ったものは少ない。本研究の課題は、IPO時点での企業の状態、とりわけ企業特性や経営資源が、当該企業の成長にどのように影響するかを明らかにすることである。IPOと企業成長の関係に関する研究としての本研究の特徴は、企業の現金保有や負債、資本金等を中心とする財務特性や経営資源の保有を直接的な説明変数として用いて、企業成長への影響を分析することにある。
 2001年から2008年までに日本の株式市場でIPOを果たした企業のうち、データが取得でき、異常値を排除した535社の企業を対象に、IPO時の現金保有比率、負債比率、資本金、研究開発集約度が、その後の売上高成長率にどのように影響するかを分析した。
 実証分析の結果、現金保有比率と負債比率が高いほどIPO後の売上高成長率は高く、資本金と研究開発集約度は、IPO後の売上高成長率に有意な影響を及ぼさないことが分かった。IPO時に研究開発集約的な企業よりも、銀行借り入れや現金保有の大きい企業がより成長するという示唆を得ることができた。
 IPOを取り巻く研究では、IPO株の価格形成理論、とりわけアノマリーの議論が多くなされてきたが、そこでは株価の過小評価や過大成果についての検証が行われてきた。IPO株を取得した株主にとってはIPO後の企業成長が重要であり、本研究はIPO後の成長に関してIPO時の経営資源や企業特性の影響という新しい視点を加えたことで、IPOを取り巻く研究の一端を担う貢献ができたと考える。

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