15期生 立花 拓紀
耕作放棄地の要因分析
-改正農地法と新しい農業の夜明け-
本論文は2009年の農地法改正によって日本の耕作放棄地はどのように変化したのか、また変化に影響を与えた要因を分析している。高山太輔・中谷朋昭の日本経済学会2012年度春季大会の発表を先行研究とし、対象となる地域を全国へと拡大し、法改正の影響を検証している。
仮説としては、農業従事者の平均年齢が高い地域ほど耕作放棄地の割合が高い、第一種兼業農家の割合が高い地域ほど耕作放棄地の割合が低い、第二種兼業農家の割合が高い地域ほど耕作放棄地の割合が高い、全農地に占める借入耕作面積の割合が多い地域ほど耕作放棄地の割合が低い、1戸当たりの経営耕作面積が広い地域ほど耕作放棄地の割合が低い、という5つを検証している。さらに耕作放棄地の変化率に地域変数がどのような影響を与えたかも検証している。
分析方法は耕作放棄地の割合を被説明変数、各地域の特性変数を説明変数とする重回帰分析を行った。また変化率を被説明変数とする分析も行っている。データは2005年と2010年の『農林業センサス』より作成し、対象地域を全国とし、欠損地のないすべての市町村データを用いている。
分析により、借入耕作面積についての仮説以外の仮説が支持された。また野菜や果樹の多い地域で耕作放棄地の割合が高いという結果も示された。一方、耕作放棄地の減少に寄与していた変数として稲作比率、野菜比率、1戸当たり耕地面積、が示された。
以上の結果より、次のような政策的示唆が得られる。
①第一種兼業農家や専業農家を増やす政策を行うことで、耕作放棄地を減らすことができる。
②農地の流動化をさらに進めることで、稲作農家の農地集約による大規模化・効率化や新規参入を促し、耕作放棄地を減らすことができる。