15期生 田村 有
創業者の属性が会社設立からIPOまでの期間に与える影響
-IT関連企業のデータによる実証分析-
近年、新規株式公開(IPO)の件数は減少傾向にあり、それはIT関連企業において顕著である。しかし、IT関連企業の中には売上高成長率が毎年150%を超えるような目立った企業があるのもまた事実である。市況の悪さやIT関連企業に対する投資家の評価の低下といったネガティブな外的要因がある中で、こうした一部のIT関連企業の成功の理由を企業の内的要因に求めるのは自然なことであると考えた。
その上で本研究では、IPOまでの期間の長さとIT関連企業の内的要因、中でもスタートアップ期に非常に大きな役割を果たす創業者の属性との関係に着目し、創業者のどのような属性が会社設立からIPOまでの期間の短縮に影響するのかを明らかにすることを目指した。分析手法は最小二乗法(OLS)を用いた。
その結果、会社設立からIPOまでの期間に影響を与える創業者の属性は、当該企業設立以前に創業者が経験してきた企業の数であることがわかった。その影響は1社につきIPOまでの期間を約10%短縮するレベルである。会社設立時の年齢や、それ以前の起業経験の有無、会社設立直後のメディア露出度は特に影響を与えない。若さからくる積極性や、メディア露出を積極的に行うことに見られるような企業を大きくしたいと思う気持ちの部分よりも、複数の企業を経て得た経験の方がIPOまでの期間の短縮には影響力を持つと言える。