15期生 山口 修平
日系小売企業の中国進出における立地要因分析
ここ数年間における、中国マーケットの成長はとても著しい。中国の経済成長率は2001年から2010年の間で平均10.5%を記録している。また、中国は2001年12月にWTOに加盟し、2004年には新たな外資投資政策である「外商投資商業領域管理方法」を施行した。その結果、2004年12月までに外資による小売業、卸売業参入の出資比率、経営内容、出店地域が大幅に緩和され、フランチャイズ経営の制限が撤廃された。これにより、外資系小売企業の中国参入は2004年12月以降、大型専門店を中心に増加していった。また、ウォルマートやカルフールといった、90年代後半に既に参入していた欧米企業も2004年以降に出店舗数を伸ばしている。
このように小売企業の中国進出が進んでいる中、日本の小売企業も海外進出することで欧米を筆頭とする外資系小売企業に対抗していく必要がある。しかしながら、日本企業の中国参入における立地選択要因分析は製造業においてはなされているものの、小売業を対象とした研究は少ない。したがって小売企業を対象とした立地要因分析を行うこと自体にオリジナリティがあるといえる。
本研究では中国に進出した日系小売企業を対象に、省・直轄市単位でのミクロデータを用いて中国国内における立地選択要因を明らかにした。また、専門店、コンビニエンスストア(以下コンビニ)、ショッピングセンター(以下SC)、百貨店の4つの業態に分けて分析を行った。まず、全業態における分析結果として、製造業だけでなく小売業においても市場規模、経済集積は中国進出における重要な立地選択要因であるといえることが示された。また業態別でみると、専門店においては市場規模が立地選択に非常に大きな影響を与えていることや経済集積が全業態においてほど立地選択に影響を与えていないことが示された。一方、コンビニに関しては経済集積が立地選択に影響を与えており、日系企業現地法人や外資系企業が多く存在する地域を選択することが明らかになった。