16期生 藤岡 健祐
国内映画市場における映画評価と興行収入の影響分析
—映画評論家とネットのレビューによる実証分析-
映画は「経験財」である。経験財とは、実際に経験しないとその良し悪しが判断できない財のことである。つまり、消費者は映画を観賞するまで、その作品の質の良し悪しを判断することが不可能である。そういった意味で、映画には「情報の非対称性」が存在する。また、一般的に、一つのシーズンにおいて、複数作品を鑑賞する人は稀である。すなわち、一つのシーズンにおいて、消費者は複数作品の中から鑑賞する作品を「選択」している。
消費者の選択基準のひとつとして重要な情報として、「他者の評価」が考えられる。消費者が自分で映画を鑑賞する前に、第三者による評価を参考にしているという考えである。近年、多くの経済学者は、映画評価と興行収入の関係について実証分析によって解明しようと試みている。
本研究の目的は、国内映画産業における映画評価が興行収入に与える影響を実証分析によって明らかにすることである。そうすることで、国内映画産業における消費者の意思決定に対して、第三者による評価がどの程度影響しているかが議論できると考える。また、消費者が、少数の映画評論家による評価と不特定多数のネットユーザーによる評価のいずれを優先しているかも明らかにする。
仮説としては、①映画評論家レビューのレート、②初日終了時点でのネットレビューのレート、③初日終了時点でのネットレビューの件数は、いずれも興行収入と相関関係にあると考えた。また、これらが高い作品ほど、ロングヒットすると考えた。
分析の結果、興行収入との関係において、①は有意な結果が得られず、②と③は正に有意な結果となり仮説は支持された。また、ロングヒットとの関係において、①②③のいずれも有意な結果は得ることが出来なかった。
これらの結果から、国内映画市場における消費者は、映画評論家よりもネットレビューを映画鑑賞の参考にすることが判明した。