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16期生 片山 裕貴

イノベーションの性質と企業成果
―新興企業の生存・撤退に関する要因分析―

 多くの企業が競争を勝ち抜くためにイノベーションを行っているが、その内容は様々であり、有効なものもあればそうでないものもあるであろう。本研究は、どのような性質のイノベーション活動が成果に結びつくのかを明らかにすることを目的とする。
 説明変数であるイノベーションの性質として、企業の特許に関する情報をもとにイノベーションの「活発さ」、「質の高さ」、「移転の困難さ」の3つを採用した。また被説明変数である企業成果として、企業の生存・撤退状況(「生存」、「倒産による撤退」、「M&Aによる撤退」)を用いた。
 使用したデータは2006年1月時点でJASDAQ(ヘラクレスを含む)またはマザーズに上場していた電気機器または機械産業に属する企業110社についてのアンバランスド・パネルデータであり、多項ロジットモデルによる生存・撤退の要因分析を行った。
 実証分析の結果、企業のイノベーションについて(ⅰ)活発なほど倒産による撤退の可能性が低い、(ⅱ)移転困難なほど倒産による撤退の可能性が高い、(ⅲ)移転困難なほどM&Aによる撤退の可能性が低い、ということが明らかとなった。(ⅰ)や(ⅲ)から、企業が生き残りを図るために、イノベーションを活発に行うことや、他社への転用が困難なイノベーションを行うことの有効性が示された。他方、(ⅱ)については疑問が残る結果となった。また、イノベーションの質の高さによる成果への影響は確認されなかった。

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