16期生 岡嶋 秀治
取締役会改革の社長交代と企業業績への影響
—業績改善を目指して—
企業が成功を遂げるためには適切な社長を選び、もし選んだ社長が良いパフォーマンスを残せなかった場合には、交代させることも重要なことである。業績不振時において、社長交代のメカニズムが機能するか否かによって、その企業のガバナンスの有効性が示される。
2000年代に入り、メインバンクの衰退や外部環境の変化に伴い、企業の内部ガバナンスの見直しが求められてきた。その中でも大きな動きの1つが、取締役会の改革である。1997年の執行役員制度の導入に端を発し、委員会等設置会社への移行や、独立役員の導入義務化など変化を遂げてきた。取締役会は代表者の選任権を有しているため、社長交代に大きな影響力を及ぼすものと考えられる。
そこで本稿では、①業績不振時に、どのような特性を持つ取締役会であれば社長の更迭の確率が高いのか、②前社長の更迭による新しい社長の選出時の株式市場の反応が、取締役会の特性でどのように異なるかという2つの点について検証を行った。
対象企業は、東証分類[電気機器]産業と[小売業]の、2004年から2013年の間で6年以上データの取得が出来た企業である。前者の分析にはプロビットモデルを採用し、後者の分析では取締役会の形をグループ化した上でイベントスタディ分析を行い、平均の差の検定及び取締役会に関する変数への回帰を行った。
結果として、①取締役会の規模がスリム化されていれば、業績不振時において社長の更迭の確率が高いことが示された。また、②新社長が選ばれた時における株式市場の反応に関しては、取締役会の特性による差は得られなかった。