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17期生 中島 寛太

新幹線開通の価格弾力性に基づく需要予測
~北陸新幹線開通の経済効果の推定~

 2015年3月14日に北陸新幹線が開通するほか、2016年に北海道新幹線、2022年に九州新幹線長崎ルートの開業が予定されており、国土交通省主導により整備新幹線の着工・開業が進められている。新幹線の開業により、地方と都市部が短時間で結ばれることで交流人口の増加や経済活動の活発化が見込まれる一方、新幹線の整備区間から外れた地域は経済活動において他の地域に対し大きな不利益を被る可能性がある。このため、現在整備新幹線の計画から外れている地域の自治体は新幹線を誘致しようと独自に試算を行っているが、とかく正の側面を強調しがちである。
 本稿はそのような地方自治体による試算が妥当なものなのかを、多くの先行研究で触れられている時間短縮効果だけではなく需要の価格弾力性も考慮に入れ、さらに新幹線の競合相手として空路を想定し分析を行った。
 その結果、空路の需要推定では、価格、所要時間とも需要に大きな影響を与えていることがわかった。一方、新幹線の需要推定では価格弾力性、所要時間の双方とも有意な結果が得られず、両地点での県民所得の合計によって需要の大部分が説明されていることがわかった。このことから、先行研究で述べられているような時間短縮効果による需要増加は少なく、新幹線の需要の大部分は空路やJRの在来線からシフトしたものであり、他の交通機関も含めた純粋な需要増加は少ないのではないか結論付けることができる。
 また、新幹線・空路の需要推定に基づき、2015年3月14日に開通する北陸新幹線の需要予測、ならびに経済効果の推定も行った。その結果、地方自治体による先行研究とほぼ同じ27万人/年の需要増加、116億円/年の経済効果があるという結果が得られた。しかし、この大部分は新幹線の需要増加によるものであり、価格や時間による需要への影響が有意でないことを考えるとこの数値よりももっと低くなることが想定され、地方自治体による先行研究の結果にも疑問が残るという結論が得られた。

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