17期生 並河 晃平
IPOにおける監査法人の役割
―監査人の違いとアンダープライシングに関する実証分析―
IPO(新規株式公開)におけるアノマリーとしてアンダープライシング現象がある。これまで、その原因をめぐり多くの実証研究がなされてきた。原因の所在として、主幹事証券会社, IPO企業, 投資家などあらゆる見解が示されてきたが、国や時期によって相反する実証結果が得られることもあり、どこに真の原因があるかということについての一定のコンセンサスは未だ得られていない。
IPOには、当事者である企業や主幹事証券会社をはじめ、様々なプレーヤーが関与するが、その一つに監査法人がある。監査法人は、財務諸表等企業情報の信頼性を保証する立場にあるだけに、投資家にとって重要な存在であるといえる。しかしながら、我が国において、監査法人の存在に着目したアンダープライシングに関する研究はあまり行われてこなかった。そこで、本研究においては、日本の発行市場を対象に、IPO企業の会計監査を担当する監査法人の違いがアンダープライシングに与える影響を検討している。
分析は、2006~2013年の新規上場企業を対象に、アンダープライシングの程度(初値の公開価格からの乖離率)を被説明変数とし、大手監査法人ダミーを含む各種企業属性を説明変数とする重回帰分析により行った。その結果、大手監査法人の存在はアンダープライシングに正の影響を与えていることが判明した。また、同じ“大手”であっても法人間で有意水準に差がみられた。