17期生 武村 快
ハンバーガーチェーンの廃業率の決定要因の推定
本研究では、東京23区版のタウンページに掲載されている10のハンバーガーチェーンの14年分のデータを用いて、Cox回帰分析による廃業の要因分析を行った。外食産業の代表であるハンバーガーチェーンは近年市場が縮小傾向にあるが、どのような店舗が市場から退出するのか、特にハンバーガーチェーン相互の立地の競合が廃業率に与える影響についての分析はこれまで行われてこなかった。
本研究で発見されたことは以下の通りである。
・駅別乗降客数は、周辺の市場の大きさおよび競争を測る尺度としては適切であるが、廃業率には影響を与えない。
・地価は廃業率に正の影響を与え、地価の高い地域においてその影響は顕著である。
・ハンバーガーチェーン同士が与える影響については、同じチェーンの出店が廃業率を高めたほかは、いずれも有意ではなかった。競合の出閉店の影響についても、全く有意ではなかった。
ハンバーガーチェーン各社は、同業他社との立地競争を意識するのではなく、賃料をはじめとする固定費を削減し、需要の大きさと他の飲食産業を含めた競合店舗の影響のバランスを意識して参入退出を決定すべきである、という経営上の含意が得られた。もっとも、ハンバーガーチェーンを含む外食産業は参入障壁の小さい産業のひとつであるため、店舗の存続には商品の差別化が重要であるのは言うまでもない。現に同じチェーンの影響度を除いた分析では、ケンタッキーフライドチキンとサブウェイの出店によって、廃業率が有意に正の影響を与えていることが確認された。
またこの研究ではスーパーマーケットやコンビニエンスストアに代表される中食産業の影響が考慮されていない。これらの産業がハンバーガーチェーンと純粋な競合関係にあるかどうかは疑問が残るものの、外食産業全体の消費額が減少している状況にあっては、飲食サービスを提供するすべての第三次産業を視野に入れた分析が望まれる。