18期生 今井 彩芽
特許権の帰属先と特許出願数の関係
-発明者個人と発明者の研究機関のいずれに帰属することが特許出願数を増加させるのか-
本研究では、特許権の帰属先と特許出願数の関係に着目し、特許の帰属先が研究者個人から所属機関に変更になると特許出願数にどのような影響を与えるのかということについて、国立大学3校と独立行政法人産業技術総合研究所に所属する研究者を比較対象として分析を行った。これらを比較対象としたのは、産業技術総合研究所においてはその研究機関自体に特許が帰属していた一方、国立大学においては所属する研究者個人に特許が帰属していたが、大学という機関自体に帰属するようになったという歴史的な流れに着目したためである。ここで、特許権の帰属先が個人から所属機関に変更になることは特許出願に負の影響を与えるという仮説をたてた。この理由は、日本の大学の研究者は企業と個人的に関わって研究をすることが多かったということと、特許権の帰属先が変更になると、改めて所属機関と企業が交渉する必要が生じるためにコストがかかるということからである。先述した仮説を検証するために2001年度から2010年度に出願された特許数のデータを用いて、パネル固定効果モデルでポワソン回帰による分析を行った。その結果、全体では発明者個人に帰属している方が特許出願数に負の影響があること、一方で、特に大学に所属する研究者に関してはその負の効果が緩和され、正の影響があることがわかった。全体の特許出願件数は増加傾向にあることを考慮すると、大学に所属する研究者に関しては、特許権は発明者個人に帰属する方が特許出願数が多いということが考えられる。