18期生 白井 悠貴
キャッシュ・コンバージョン・サイクルの決定要因
-製造業中小企業の分析-
通常の商取引による資金繰りを測定するCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)という指標は、資金調達手段が限られる中小企業にとって非常に重要な指標であるが、CCCに関する計量分析は、日本ではほとんど行われていない。本稿は、日本の製造業中小企業の財務データによるCCC決定要因分析の初の試みである。また、従来の海外の研究に比べて、産業大分類ではなく中分類によるより細かな業種要因に着目したことや、CCCを売掛債権回収日数・棚卸資産保有日数・仕入債務支払日数の3つに分けて分析し、どのような経路を経てCCCが短縮されるのかを考察したことが大きな特徴である。本稿では、CCCが内部資金創出力、企業規模、レバレッジ、成長率、有形固定資産比率、および業種要因に影響されるという仮説を立て、製造業中小企業700社の5年分の財務データによる操作変数法とGMM分析を用いてそれを検証した。 分析の結果、成長率が高い企業は市場での購買交渉力が相対的に強まり、買い手企業に対して短い売掛債権回収日数を要求できるようになり、さらに、売れ行きが良いことにより在庫(棚卸資産)保有日数が短くなる結果、CCCが短くなることがわかった。他にも、製造業内では業種によるCCCの違いはみられないが、売掛債権回収日数と棚卸資産保有日数には違いがあることが確認された。 キーワード:キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)、売掛債権回収日数、棚卸資産保有日数、仕入債務支払日数、資金繰り、中小企業