18期生 山田 耀介
銀行合併における金融持株会社制採用が経営パフォーマンスに与える影響
近年、金融業では持株会社の一種である「金融持株会社」という形態へ移行する企業や 、合併において金融持株会社制を採用する企業が増加しており、金融持株会社制は多角化 や業務提携、業界再編など様々な手法として注目を集めている。しかし、それらの利点は 必ずしも実証的に示されているわけではなく、現状では十分に研究されているとは言い難 い。 本論文は、金融持株会社制を採用した銀行合併と、金融持株会社制を採用しなかった銀 行合併とを比較することによって、銀行合併における金融持株会社制採用が経営パフォー マンスに与える影響を分析した。 分析の結果、①地方銀行の合併において、金融持株会社制の採用は経営パフォーマンス に正の影響を与える、②銀行合併において金融持株会社制を採用した場合、合併直後はそ のメリットをデメリットが上回ってしまうため、銀行合併における金融持株会社制の採用 は、より長期的に収益力の向上や効率化を目指す場合に有効である、といった示唆が得ら れた。 規制緩和や市場のグローバル化が進む中で、今後も金融持株会社は増加すると思われる が、銀行合併における金融持株会社制採用の利点のみならず問題点についても考慮し、金 融持株会社制の特徴と企業自身の特徴を照らし合わせ、金融持株会社制が最適解であるの か、慎重に見極めたうえで採用することが求められる。