20期 神宮寺 順紀
日焼け止め価格におけるメーカープレミアムの検証
~ヘドニックアプローチを用いた実証分析~
近年、日焼け止め市場は拡大を続けており、出荷金額ベースでは直近 5 年間で 約 1.5 倍となった。それに伴い、数百円から数千円までの日焼け止めが店頭に並 ぶようになったが、この価格差は何によって生まれたものであろうか。そもそも 日焼け止めは、①「医薬部外品」の日焼け止めと「化粧品」の日焼け止めが混在 している、②SPF や PA などによって効果・効能が客観的に明記されている、と いう特性がある。こうした特性を踏まえた上で、メーカーブランドによる価格の 増分をメーカープレミアムと定義し、日焼け止め価格にどのような影響を与え るかを中心に分析した。 本稿ではヘドニックアプローチを用いた最小二乗法で日焼け止め価格の推定 をおこなった。価格に関しては POS データを使い、2017 年 7 月から 9 月の平 均価格を用いた。説明変数として用いた効果・効能や製品タイプなどの情報は全 て各企業の商品情報のページから入手した。推定結果から、SPF の値を除いて 効果・効能は日焼け止め価格に正の有意な影響を与えないことが分かった。その 一方で、化粧品メーカーが販売している日焼け止めは、医薬部外品メーカーの日 焼け止めと効果・効能が同じであっても 2 倍近くの価格がつけられることが分 かった。このことから、主に、消費者のメーカーによるブランド価値の認識の差 によって、日焼け止めの価格差は説明できると分かった。 課題としては、有意な影響を与える効果・効能に関する変数が見つからなかっ たことやメーカーダミーがブランドの効果を示す完全な代理変数ではなかった ことが挙げられる。また、商品の購入時期や地域、性別などの消費者属性を分析 に組み込むことで価格をより説明できる可能性があったといえる。