20期生 岡本 涼平
リーマンショック以降における希望退職募集の報道が株価に与える影響
希望退職の募集に対する株式市場の反応に関しては、理論的に明確とは言えない。 実際、先行研究によると、年代や国によって株価変動の推定結果は異なる。希望退職 では、人件費を削減することによる生産性上昇効果が期待できる一方で、高いスキル を持った転職に成功しやすい労働者が流出することによって生産性が低下することも 考えられる。また、希望退職の報道は将来の業績悪化のシグナルと受け止められ、株 価を下げる要因ともなりうる。そこで本稿は、どのような企業がどのような形で希望 退職を実施することが効果的かという示唆を得ることを目的に実証的に研究してい る。本研究の新規性は、最新のデータを用いて分析していること、希望退職に焦点を 当てていること、ガバナンス要因に着目していること、希望退職の募集対象年齢を考 慮していることである。 回帰分析によって主に示されたことは、経営危機とは言えないタイミングで希望退 職を募集した場合は株価を上昇させる傾向にあるが、大規模な募集を行うことは逆効 果であるということである。これらは、先行研究の結果と合致している。しかしなが ら、ガバナンス要因や募集対象年齢に関する変数は、統計的に有意な結果は得られな かった。