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20期生 滝戸 周平

フィルムコミッション活動がもたらす経済効果の検証

 本稿では、フィルムコミッションはどのような自治体に設立される傾向にあ るのか、また設立された自治体に対してどのような経済効果をもたらすのかを 実証的に分析していく。 近年、アニメやドラマのモデルとなった街を訪れる「聖地巡礼」が盛んにな ってきている。これをメディア誘発型観光といい、自治体においてその活動を 取りまとめているのがフィルムコミッションである(以下 FC)。日本における FC は、2000 年に大阪に初めて設立されたのを皮切りに、現在では多くの自治 体に設置されている。FC が設立されることでロケ誘致が活発化し、主に二つ の効果が期待されている。一つは、アニメやドラマのモデルとなることで、そ れを目当てにした観光客が増加するという間接効果である。もう一つの効果 が、ロケが行われる上での宿泊費や弁当など、ロケ隊が現地で消費活動を行う ことによる直接効果である。本稿では、観光客数の市町村別のデータが入手困 難であること、また直接効果に着目した研究が少ないことなどから、直接効果 を反映していると考えられる年間商業商品販売額を被説明変数にとって分析を 行う。また、この被説明変数は観光客の増加によっても影響を受けることが考 えられるため、間接効果も反映していると言えるだろう。 分析方法は以下の通りである。第一段階の分析として、クロスセクションデ ータを用い、被説明変数に FC の設立ダミーを置いたプロビット分析を行う。 説明変数には市町村の規模や観光資源といった市町村の特徴を表す変数を置 き、どのような自治体に FC が設立されるのかを探る。第二段階の分析では、 三年分のパネルデータを利用し、年間商業商品販売額を被説明変数にとり、固 定効果 DID 分析を用いて設立による効果を検証する。 分析結果から、観光資源が豊富で、観光振興の意識が高い自治体ほど FC を 設立する傾向にあることが分かった。また第二段階の分析において設立ダミー と設立後ダミーの交差項の係数は有意な結果を示さず、仮説のような結果は得 られなかった。ロケ隊による消費の効果は微々たるもので、一つの市町村の年 間商業商品販売額の増減を左右しうるほどではなく、また観光客による消費 も、FC が設立されてロケの回数が増えただけでは、全体を押し上げるほどに はならないということである。

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