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21期生 井倉 佑樹

外国人に住民投票権を与えることの要因・効果分析
~政治的要因と開業率の視点から~

 近年、地域活性化が再び目を向けられている。2014年の第二次安倍内閣の一つの政策として掲げられた「地方創生」のもと、外国人政策も取り組まれているが、インバウンド需要の取り込みから地域活性化につなげていく流れが主流である。もちろん外国人環境客を増やすことも重要であるが、日本人人口が年々減少していることを考慮すると外国人居住者を増やし長期的な地域経済の発展を促すことにも注力していくべきである。
 外国人居住者を増やすためにも、「多文化共生社会」を推進していく必要がある。「多文化共生社会」の指標として、外国人居住者に住民投票権を与えることが挙げられる。地方分権により、自治体ごとに独自の住民投票が可能となり、自治体によっては外国人が住民投票に参加することができるようになった。
 本研究では、外国人への住民投票権付与の有無を条例という自治体レベルの政策で判断し、決定要因とその地域経済に対する効果を分析する。要因分析では外国人に関する変数に加えて政治的要因に関する変数をモデルに組み込みcox比例ハザードモデルによるサバイバル分析を行う。効果分析では、外国人への住民投票権付与が外国人に寛容な社会であること、社会的な多様性につながると考え、開業率への効果推定を処置効果推定におけるIPWRA分析を用いて行う。
 要因分析では、外国人に関する変数として主要5か国(中国、朝鮮、ブラジル、フィリピン、アメリカ)の国籍別対人口比率を用いたが、フィリピン国籍比率が住民投票権付与を遅らせることが分かった。また、政治的要因としては外国人政策に関しては革新であると言える民主党を革新政党とみなし分析すると、革新政党が多いほど住民投票権付与が促されることが分かった。
 効果分析では、外国人に住民投票権を付与することが開業率に負の効果があることが分かった。これには、今回用いた経済センサスによる開業率データではなく毎年とれる開業率をとることが望ましい可能性、現状データの制約上不可能であるがパネル分析を用いることが望ましい可能性があるものの、開業率に対して負の効果がある可能性も否定できない。
 今後在日外国人が増加し、データ面でも豊かになることで現段階よりも精度の高い分析が行われることを願う。

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