21期生 田口 雅也
ファミリービジネスにおける経済的頑健性の実証分析
本稿では不況に対してファミリービジネスが非ファミリービジネスと比べて耐性を持つか否かについての研究を行った。
企業の生産性が問われる中でファミリービジネスの注目が集まっている。しかしながら日本にはファミリービジネスの研究は多くない。その中でも特に注目されていない経済的な頑健性を調べることでファミリービジネスの優位性、劣位性に関する理解をさらに進めることができるという新規性をこの研究は持ち合わせる。
用いたデータは日本株式市場上場を果たしている企業のうち、証券コード協議会によって製造業に分類されている企業を対象とした。分析手法は固定効果DID(Difference-in-Difference分析)を用いた。リーマンショックを基準として前後の財務パフォーマンスの変化をファミリービジネスと非ファミリービジネスで比較した。
また本稿の特徴はファミリービジネスの中でも創業家による企業の占有具合によって分類したところである。企業の所有と経営の視点から創業家の占有度合いを考え、6つに分類した。各々の変数をモデル式に組み込むことで創業家の占有度合いが企業の経済的頑健性に及ぼす影響も見ることが可能となった。
分析の結果としては、ROAにおいてファミリービジネスの変数が正に有意な結果に、また創業家が企業の所有権・経営権の両方を占有することを示すファミリービジネスAの変数がROAにおいて正に有意な結果が出た。この結果に対しては、コストカットなど内部の変化によってROAは変化させやすいので創業家の影響がほかの被説明変数に対してよりも強く出たのではないかとの推測をした。加えて創業家が企業の所有権のみを弱く占有していることを示すファミリービジネスbの変数がROEにおいて正に有意な結果が出たが、これに関してはサンプル数が少ないことや、企業の所有権のみをより強く占有することを示すファミリービジネスBの変数が有意に出なかったことから、整合性のある推測を行うことはできなかった。
これらの結果によりファミリービジネスは外的変化にある程度の耐性を見せることが分かったが、ファミリービジネスの定義の変化による結果の違いの可能性などの課題は残っている。