21期生 上続 高裕
政府のお墨付きが企業価値にもたらす効果:ものづくり日本大賞を題材にして
本論文では、政府のお墨付きによる企業価値向上効果を実証分析により検証している。対象としたのは、2005年から七回にわたって行われている、ものづくり日本大賞である。本研究の意義は、近年増えてきた健康経営銘柄などの認証政策の理論的基礎付けと、ものづくり日本大賞そのものの政策効果分析である。なお、先行研究ではお墨付き効果をイベントスタディによって大企業を対象に短期的に検証しているため、差別化をはかるため分析方法は長期的な効果をはかれるパネルデータ固定効果分析を採用した。2005年から2018年までの企業別パネルデータを用いて、受賞すると1をとるダミー変数が、企業価値を示す時価簿価比率に対して正の影響があるかを検証した。時価簿価比率とは、会計上の企業価値である簿価に対する時価(どれだけ市場から評価が高いか)をはかる指標であり、受賞によって市場からの評価が高まり相対的に企業価値が高まると考えられる。その際、認証政策の狙いから最も遠いと考えられる東証一部上場企業を除き、ジャスダックや東証マザーズなどの上場企業に対象を絞っている。10%有意であるためやや説得力にはかけるが、企業の時間に一定の性質や財務データから導出される可変変数を制御しながら仮説を支持する結果となった。