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21期生 山床 真由

メディカルツーリズム導入を日本で促進するために
-国内医療機関の医療渡航者受け入れ要因実証分析―

 近年「メディカルツーリズム」という、病気・けがの検診や治療などを目的として、居住国とは別の医療水準の高い国に渡航する新たな観光スタイルが提唱されつつある。日本はアジアの新興国に比べるとメディカルツーリズム導入に遅れを取っているが、政府が2010年に発表した新成長戦略の中ではインバウンド増加の一手段として導入強化を図っていくとしており、またその渡航に必要な医療滞在ビザの発給数も右肩上がりで伸びている。そこで本研究では日本ですでに医療渡航者を受け入れている医療機関にどういった特徴があるのか、その受け入れ要因を実証分析によって検討した。ちなみにメディカルツーリズムがその国の経済に与える影響は大きく、また国同士で医療技術をより高めていくための一要因ともなりうるため、その導入が広まっていくことはこれからの時代において日本国内外にプラスの影響を与えるといえる。
 すでに導入が進んでいるアジア新興国においてはいくつかの先行研究があるが、国内で、かつ病院に関する定量データを用いた分析はまだなされていない。
 本研究では日本国内で医療渡航者を受け入れている医療機関と外国人観光客を受け入れている医療機関とをロジスティック分析によって比較した。その分析の中で大学附属やがん治療に優位性を持つ、などといった医療機関の特徴を表す変数を設けることでメディカルツーリズム導入の要因とし、1510の医療機関を対象としたクロスセクションデータを用いた。
 分析の結果、医療機関にがん早期発見につながる検診機械であるPETと外国語ホームページがあること、そしてその空港からのアクセスのよさが医療渡航者受け入れ医療機関の特徴としてみられ、メディカルツーリズム導入においては重要であることがわかった。
 国内ではメディカルツーリズムに対して、官公庁を中心とした賛成派と地方の医療機関を中心とした反対派に分かれており、前者はその経済効果を理由に、後者は地方の高齢者などへの医療供給不足を理由に意見を発している。そのため今回の研究結果は国内の全医療機関に対して適用できるものではないが、少なくとも分析の対象とした外国人観光客受け入れ医療機関はこの結果を踏まえてメディカルツーリズム導入を検討する余地はあるだろう。

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