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22期生 伊藤 一成

プロバスケットボールチームの人気決定要因
―リーグ統合の影響の検証―

 プロスポーツチームの人気度合いの決定には強さによる影響が最も強いということが様々な先行研究によって明らかになっているが、2016年に開幕した日本のプロバスケットボールリーグである「Bリーグ」においてはチームの人気に影響を与える要因は必ずしもチームの強さだけとはいえないようである。要因としてBリーグにはNBLとbjリーグという2つのバスケットボールリーグが統合してできた背景があり、それら2つのチームは「人気のbj、実力のNBL」と呼ばれるようにそれぞれ異なる特徴を持っていたことが挙げられる。このことについて裏を返せばリーグが統合されたことでその背景による差が徐々に緩和され、統合以前に比べてそれぞれのチームの人気に変化が現れた可能性が示唆できる。
 本稿の研究ではBリーグその前身であるNBL、bjリーグを対象に、Bリーグ特有の設立背景である「リーグの統合」に焦点を充てて「実力のチーム」と「人気のチーム」のどちらが統合によってより観客動員を増やしたかを検証している。分析には元NBLのチームを処置群、元bjリーグのチームを対照群として、統合前後を比較するDID分析を用いてどちらが統合によってより人気を大きくしたかを検証した。
 結果は2016年以降ダミーと元所属NBLダミーの交差項が正に優位となったり、元NBLのチームは統合による観客数増加の影響を、元bjリーグのチームより大きく受けるという仮説を支持した。具体的には元々実力はあったが大体的な集客活動を行っていなかった元NBL所属のチームも、リーグ統合の結果元bjリーグ所属のチームのように集客活動を行うようになったり、ファンの母数が多かった元bjリーグのチームが対戦相手になったりすることで今までより多くの集客が得られたという考え方ができる。
 これは異なる特徴を持った2つ以上の組織が統合する場合には、その恩恵に偏りが存在するという場合の一例を示しているといえる。リーグのようにより小さな組織の集合をもつ組織同士が統合を行う際(例えば市町村という小さな集合体を持つ都道府県間の共同の取り組みや、子会社を多く持つ企業同士の合併などが挙げられる)には、個々の小さな組織の意見だけに耳を傾けていくのではなく、お互い組織の持つ制度や特徴といったより大きな側面についても考えて判断を行っていくべきだと考える。

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