template

Articles

22期生 尾崎 啓祐

オーソライズドジェネリック医薬品が後発医薬品の処方シェアに与える影響

 本研究は、後発医薬品の中でも近年注目を集めているオーソライズドジェネリック医薬品(以下AG)が、AGを除く後発医薬品の処方シェアに与える影響を実証分析するものである。AGとは、先発医薬品を保有する企業が関連子会社や系列会社に許諾を与えて製造される後発医薬品であり、先発品と有効成分・添加物・製法が全く同じであることが大きな特徴だ。一般的な後発医薬品よりも信頼性が高く、医師・患者双方が安心して処方・服用できるうえ、後発医薬品扱いなので先発医薬品よりも低い薬価で患者に提供される。
 海外では10年以上も前からAGが出現しており、AGに焦点を当てた分析も存在する。しかし一方の日本国内では、AGが出現してからまだまだ歴史が浅く、医療制度や公定薬価といった面で海外とは文脈が異なっている点、そしてAGを分析の中心に据えて実証分析を行っている国内の研究は筆者の知る限りでは見つからないという点があることから、本研究が実証分析を試みるものである。
 NDBオープンデータをはじめとする厚生労働省の各種医薬品関連の公表データや、富士経済出版の「ジェネリック医薬品・バイオシミラーデータブック」、企業の財務データが収録されたデータベースのeolなどをデータソースとして、医薬品成分別の3年間分のパネルデータを作成し、固定効果分析を用いて分析した。特定の薬効領域を対象とするのではなく、広範囲の薬効領域を分析対象としたうえで、固定効果分析で医薬品の成分毎の市場が持つ固有の性質を取り除き、AG自身が及ぼす影響度を測定した。結果としては、各成分内でAGが存在すること自体を示すダミー変数と、AGが発売されてからの経過年数は、AG以外の後発品処方シェアに対して有意な結果が得られなかったため、AGが処方シェアを下げる効果を統計的に示すことはできず、やはり医薬品成分毎の市場特性が無視できないのだと考える。しかし、AGを含む医薬品データのアクセシビリティ向上や、蓄積の少ない国内のAG関係の研究・実証分析が今後進んでいくこと、そして本研究がその内の一つとして貢献できることを願ってやまない。

Back