22期生 佐々木 聖弥
姉妹都市交流が訪日観光客数に与える影響:国籍別データによる分析
本研究では、日本の地方自治体による海外姉妹都市と の交流活動が、インバウンド需 要に与える影響を分析した。 近年、訪日外国人観光客が増加し、インバウンド需要が日本経済に与える影響が大きくなりつつある。 一方で、インバウンド需要には地域格差が存在しており、格差解消には、日本全体としての魅力発信だけでなく、自治体による個別の魅力発信も必要である。そこで、本研究では、地方自治体が独自の魅力を海外に伝える方法として、姉妹都市交流に注目した。 分析にあたっては、2012年から2018年の7年分の都道 府県別・国籍別宿泊者数(自然対数)を被説明変数として用 いてパネル固定効果分析を行った。説明変数には、都道府県 別の姉妹都市交流回数、観光資源、 出発国の一人当たりGDPを用いた。また、分析対象国は日本との姉妹都市交流回数上位である中国、韓国、アメリカ、カナダ、オーストラリアとし、それぞれの国について個別の分析を行った。分析の結果、姉妹都市交流活動には、外国人宿泊数を増やす効果があるとは言えないということがわかった。理由は二つ考えられる。一つ目は、姉妹都市交流と観光PRは直接結びつかないということだ。姉妹都市交流は観光業への活用が進みつつあるものの、従来の友好親善や文化の相互理解を主目的とした交流も多い。二つ目は 、姉妹都市交流の効果は短期では出にくいということだ。本研究では、説明変数として、前期の姉妹都市交流回数を用いた。しかし、姉妹都市交流の効果が表れるまでには時間がかかるため、長期的な計測を行う必要がある。