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23期生 金山陽菜乃

不登校の要因分析

 少子高齢化が進む中で学齢期の子どもの数は減少する一方、不登校児童数及びその割合は近年増加傾向にあり、2018年度において小中学生合計で16万人を超え、過去最高となっている。文部科学省(2014)によれば、不登校経験者は平均に比べて高等学校の中途退学率が遥かに高い。また、20歳時の大学進学率・在籍率も平均と比較して低く、中学校での不登校経験はその後の進学・進級・卒業・最終学歴にも大きな影響を与えていることが推測される。一方で、不登校の問題を計量的に分析した先行研究は多くない。不登校と学級規模の関係に着目した研究である中室(2017)によれば、小学校では学級規模の縮小は不登校を減少させる因果効果があるが、中学校では因果効果はみられないことが示された。そこで本研究は、学級規模に関して中室(2017)で明らかにされた小学校と中学校の因果効果の違いを踏まえ、不登校に関して学年に焦点を当て、2013年から2017年における東京都武蔵野市の小中学校の学年別パネルデータを用いて「不登校者の出現率は、学年が上がるにつれて上昇する。」という仮説を検証した。その際、小学校,中学校単独の分析に加え、校区によって小学校と中学校のデータを接続し、小学校入学から中学校卒業までの9年間について固定効果分析を行った。武蔵野市を選定した理由としては、ほとんどの市区町村はHPに市全体の不登校者数しか掲載していないが、武蔵野市については学年ごとの不登校者数を入手することができ、本研究で着目したい学年ごとのデータが得られたというデータ上の制約が主な理由である。パネル固定効果分析の結果、不登校の出現率は小学2年生で一時的に減少するものの、小学3年生から中学3年生までは学年が上がるほど上昇することが明らかとなり、仮説を概ね支持する結果となった。また、小学6年生から中学1年生になる際の増加が特に顕著であることが分かった。現在、わが国では学校における資源配分は、学級,学校や学年の事情によらず、平等に行われる傾向がある。不登校の出現率の上昇幅が大きい中学1年生では、教員や非常勤加配教員を重点的に配置するなど、学年ごとに弾力的な資源配分を行っていくことも有効であると考えられる。また、本研究を進めるにあたり、データ的な制約がかなり大きかった。不登校の問題を考える上で、プライバシー保護も考慮しつつ、長期にわたって追跡可能な個票データの公開も重要であると考える。本研究の課題としては、学年が上がるにつれて上昇した不登校の出現率が、不登校継続者によるものなのか、新たな不登校者のためなのか、データの制約上個体を追跡することはできないため、区別することができない点が挙げられる。今後、情報の公開が進み、より精度の高いデータを用いることができれば、より信憑性の高い分析が実現できると考える。

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