23期生 松浦 有花
企業の投資表明の効果:テキストマイニングによる分析
リーマンショック以降の世界経済は不安定な状態にあり、また経済の相互依存が進む中で外的な変動は様々な形で波及しうる。このような危機に対応し業績を立て直す力は、今日の企業が安定した経営を行う上でますます重要視されている。そこで本研究ではリーマンショック直後の企業の投資行動と業績回復の関連を検証した。書類上で表明された投資を実際に行うことで利益が増加し業績が回復すると仮定して、実行された投資額の変化率を操作変数とする二段階の回帰分析を行っている。第一段階で書類上の投資表明から投資額の変化率を推定し、第二段階ではその推定値を用いて業績回復の説明を試みた。このとき企業の有価証券報告書のテキストデータを用いることで書類上の投資表明を始めとする各種変数を作成した。本研究の結果として、いずれの段階でも有意な結果を得ることはできず、表明された投資が実際に行われたという証拠も、さらにその投資が後の業績回復に繋がったという証拠も見つけることはできなかった。今後の方向性としては、細かな企業行動のモデル化や数値に表すのが難しい欠落変数への対処があげられる。