23期生 小田 裕太
スポーツの学生競技人口が将来の人気や収益に与える影響
本研究では、スポーツの継続的な発展の道筋を示すことを研究目的として、将来のトップ層を形成することとなる学生の競技人口に注目し、その数が将来的な人気や収益に与える影響を検証した。本稿で提示した仮説は「学生の競技人口の増加が将来的なスポーツの人気や収益に対して正の影響を与える」「観客数や収益に正の影響を与える突発的な出来事が発生した際、その効果が4年以上にわたって続くことはない。」という2つである。最初の仮説の検証では、説明変数となる学生の競技人口として、高校生と中学生の人口を採用した。また、被説明変数となる人気と収益に関する変数として、各トッププロリーグの試合平均観客数(人気)および各競技の中央団体の事業収益の額(収益)の2つを採用した。また、後者の仮説の分析では、被説明変数はそのままに、人気事象を説明変数として、説明変数の事象の発生から8年目までのラグを取って分析を行った。また、この分析では最初の仮説で使用した変数をコントロール変数として分析に入れることで、それらの影響を排除している。今回の分析で使用したデータセットは、説明変数となる学生競技人口は、高校生は2003年、中学生は2001年以降の年度単位の競技別人口を取得し、使用した。被説明変数に関しては、各リーグや競技団体から必要なデータを年度ごとに取得した。また、その他の変数に関しては、各種実績を調査して作成した。このようにして作成したパネルデータに対して、固定効果モデルを採用し、各競技内での学生競技人口の変動が、各競技内での被説明変数の変動に及ぼす影響を分析した。分析の結果、高校生の学生競技人口が1~3年後に事業収益に対して、正の影響を与えることが分かったが、平均観客数を被説明変数とした場合はどの年数に関しても有意な結果は出ず、そして中学生に関しては、どのような場合でも結果が出なかった。次に、二つ目の仮説の検証を行ったところ、4年にわたって有意に出る人気事象はどの分析でも存在しなかった。これらの分析の結果より、各競技団体の収益を増加させるための要素として、高校生の学生競技人口が存在することが示唆された一方で、平均観客数を増加させるための指針は本研究では発見することはできなかった。また、後者の仮説に関しては、本研究のデザイン上、「どのような人気事象に対しても不成立でない」ということを示すことはできたが、「成立している」ということはできず、これは今後に残された課題の一つである。