template

Articles

23期生 綿貫 泰樹

部活動における好成績が高校の受験倍率に与える影響

 日本では高校受験をする際の志望校選びの段階において「部活動が盛んである」という謳い文句をしばしば目にする。スウェーデン、ドイツといった学校選択制度が導入された後について計量分析を行いスポーツに力を入れた学校が経営において強みを得たことが明らかにされている。しかしながら日本では、部活動が志望動機の大きな要因の一つとなっていることをアンケートによって明らかにしている研究、文献調査によって「高校野球の名門校」となることが生徒募集に活用されていることを明らかにしている研究にとどまり、欧米のようなデータを用いた研究は行われていない。そこで本研究では、計量分析を用いて部活動が生徒募集に与える影響を明らかにした。本研究は、高校課程からの生徒募集を行っている都内の295の高校を対象に、2015年から2019年の5年間の入試データおよび2009年から2018年の10年間に部活動が全国大会に出場したかどうかという実績を説明変数とする固定効果モデルを用いて計量分析を行った。固定効果モデルを用いることにより校風やアクセス、制服などといった観測期間を通じて変化することのないその学校特有の効果を除去することが可能である。全部活動を対象にした分析では、全国大会に出場した効果は見られないという結果になった。そこで設置されている学校数が多い部活動を「メジャー競技」とし分析をおこなうと、メジャー競技で全国大会に出場すると翌年の受験倍率を大きく引き上げる効果がみられた。また、その効果は公立高校よりも私立高校においてより顕著であった。進学校と非進学校を区別して行った分析では、進学校においてはメジャー競技で全国大会に出場しても有意な効果は観測できなかった一方、非進学校では有意でより大きな効果がみられる結果となった。継続的な全国大会出場による効果、全国大会の出場による効果の持続性に関しても分析を行ったが有意な結果は得られなかった。部活動の実績には注目される部活動であれば受験倍率を上昇させる効果があること、学校の特性によってその効果に違いがみられることが分かった。一方で、本研究は東京都内の高校のみを対象としており全国規模で適用できるか検証を行えていないこと、データの制約上5年間という期間でしか分析を行えていないこと、生徒募集の際に志望動機の要因となっているのは部活動の実績だけではない可能性といった点で課題が残っている。

Back