24期生 福島 拓己
観客によるホームアドバンテージについて:J リーグ無観客試合による分析
新型コロナウイルスの影響により、世界中でソーシャルディスタンスを取るようになった。その中でリモートワークが普及しているが、リモートワークにより同僚・上司からの社会的圧力社会的圧力がない状態は、仕事の生産性を向上させると言われている。このような社会的圧力はスポーツ界にも存在し、プロスポーツにおいて観客の社会的圧力が成績に影響を与える可能性が報告されている。
本研究では、コロナ渦における日本のプロサッカーリーグ1部の2017-2021 年のデータを用いて、新型コロナウイルス感染症の流行による観客・応援スタイルへの制限という外生的な状況を利用し、社会的圧力による成績への影響(ホームアドバンテージ)を確認する。
分析手法はパネルデータ固定効果分析を用いる。成績の指標として、獲得勝ち点を被説明変数に使用する。説明変数として、無観客試合・ホームチームの観客のみ入場可能な試合・応援スタイルが制限されている試合のそれぞれのダミー変数を用い、制限による成績への影響を確認する。また、無観客試合の影響を受けやすいチームの特徴を明らかにするために、新型コロナウイルス流行以前の観客動員に基づくサブサンプルによる分析も行った。
分析結果として、無観客試合では有観客試合に比べてホームチームの獲得勝ち点が減少すること、入場する観客がすべてホームの観客である試合でもホームチームの獲得勝ち点は増加しないことがわかった。さらに、これらのホームアドバンテージは拍手や太鼓などの応援によって引き起こされていることがわかった。これは、ホームアドバンテージが観客要因によってもたらされている、そして観客の拍手や太鼓を叩く行為などの具体的な後押しの表現によってもたらされていることを示唆している。また、平均観客動員率が高い、もしくは平均リーグ順位が低いほど、無観客試合による観客の喪失の影響は受けにくいとわかった。
本研究の課題として以下の三点が挙げられる。第一に、チームへの影響しか加味できておらずプレーする個人への影響を測れていないことである。第二に、社会的圧力が試合結果に与える影響のうち、プラスに働くものとマイナスに働くものを区別できていないことである。第三に、観客の属性を識別できていないことがある。ホームチームを応援する観客とアウェイチームを応援する観客の比率や、熱心に応援する観客の比率が異なると、選手へ伝わる応援の大きさは異なると考えられる。