24期生 作山 直輝
住宅用太陽光発電システム導入に対する地方自治体の補助金制度について
現在、環境対策の一つとして、太陽光発電の普及を目的に補助金の給付や固定価格買取制度といった補助政策が実施されている。経済産業省は、2030 年までに太陽光発電設備を現状の約 2 倍に増加させることを目標としているが、足下では太陽光発電の新規導入は減少傾向にある。そこで、本研究では、住宅用太陽光発電に対する各市町村の補助金制度の効果について分析を行い、地方自治体の補助金制度の有効性を検証した。これまで国内においては国や都道府県レベルでの補助金制度の実証研究や、特定の自治体に絞ったケース分析は行われてきたが、市町村が実施する補助金制度の効果を網羅的に検証した研究はみられない。また、本研究では市町村の補助金制度の変更要因についても追加で分析を行い、補助金制度に影響を与える要因についても検証を行った。
分析においては、全国の市町村、特別区の2018 年度から2021 年度の4 年度分のパネルデータを用いた。まず、各自治体の補助金制度が太陽光発電導入に与える影響について固定効果分析を行った。続いて、補助金制度の変更要因について各補助金額の年度ごとの変化を利用し、ロジスティック分析を行った。太陽光発電の導入量に関するデータは、資源エネルギー庁の情報公表用ウェブサイトから、その他のデータは政府統計や各自治体のホームページ等を参照した。
主な分析結果として、補助金制度は太陽光発電を新規に導入する住宅数の増加に影響を与えるが、その効果は限りなく小さかった。また、市町村内の全体の導入容量には有意な効果はみられなかった。さらに、補助金の支給要件に蓄電池等の周辺機器の同時設置を設けている自治体では、太陽光発電設備のみの設置で補助金を支給している場合と比べ、新規導入に負の効果があることが示された。また、市町村の補助金額の決定要因は、非住宅用太陽光発電導入率の高さと財政の硬直性が補助金を減縮させる傾向があり、補助金の支給対象である住宅用太陽光発電の導入率の増加は有意な影響を持たないことが分かった。
分析結果より、消費者は、補助金を受給できる場合でも、太陽光発電の設備容量を大きくしたり、周辺機器の購入によって初期費用が大きくなることを忌避する傾向があることが明らかになった。これは、消費者へのアンケート調査をもとに分析を行った先行研究とも一致しており、現行の補助金制度が太陽光発電容量の増加に対し効率的ではないことが示唆されている。また、補助金の減縮の要因が、非住宅用PV の導入率の増加、経常収支比率の高さであることは、補助金を減縮している自治体が独自で補助政策を実施する余裕がないことを示唆しており、太陽光発電の増加には政府による追加補助や設備設置費用の低下による消費者負担の更なる軽減が必要であると言える。