25期生 今吉 明日翔
モバイルゲームの売上高ランキングに対するネットワーク外部性の影響
本稿はApp Store・Google Play Store という2つの異なるアプリケーションダウンロードサービスの日次ランキングデータを用い、ある版のプレイヤーがもう一方の版の売上ランキングに直接的に影響を与えないことを利用して、ゲームアプリにおけるネットワーク外部性を識別しようと試みた。プラットフォームにおけるネットワーク外部性の効果を検証するような研究は、そのデータがしばしば企業の内部データであり入手が困難であることからあまり多くない。本稿は各ゲームアプリというプラットフォームにおけるネットワーク外部性の効果の検証を試みているという点において新規性がある。
結果としては、両版ともに他プレイヤーとの1対1のオンライン対戦が主要素のゲームについては、ネットワーク外部性が生じていることが確認できた。この結果は2つの追加的な分析においても支持され頑健であった。一方で、3人以上のプレイヤーがリアルタイムで交流することが主要素のゲームについては、ネットワーク外部性が確認できないか、負の影響が生じている結果となった。この結果は追加的な分析も含めて有意性や係数の正負が分析によって異なっていたため頑健な結果とは言えないと考える。
また、本稿では両版が双方に及ぼすネットワーク外部性の効果の大きさの違いについて、サンプルデータを比較可能な形に直し分析した。結果として、他プレイヤーとの1対1のオンライン対戦が主要素のゲームにおけるネットワーク外部性については、Android版がiOS版から受ける影響の方が他方に比べて3倍以上大きくなった。これは日本のスマホOSのシェアの違いが生み出した結果だと考える。
本研究にはいくつか課題が残されている。1つは、本稿はアプリ内でのプレイヤーの交流によって生じるネットワーク外部性に着目したが、SNS上の交流といったアプリ外でのプレイヤー同士の交流の影響を考慮していない点である。もう1つは、データの制約上、アプリの広告の効果を考慮していない点である。アプリの広告は売上及びダウンロード数の両方に影響する交絡因子だと考えられる。しかしこのような課題はあっても、2つの異なるランキングデータの違いを駆使しゲームアプリにおけるネットワーク外部性を識別しようと試みた点は本研究の独自の研究である。本研究がプラットフォームにおけるネットワーク外部性に関する実証研究の発展の一助になることを期待する。