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25期生 金子 雄大

高度専門職の創設が労働生産性に与える影響

 少子高齢化により、深刻な人材不足が起きている。近年では、女性や高齢者の就業率の上昇により、労働力人口は増加傾向にあるが、生産年齢人口は減少傾向にある。そのため政府は、外国人労働者数の受け入れの拡大を目指している。本研究では、外国人労働者の受け入れ政策の中でも、高度専門職制度の創設(2015年)に注目し、地域の労働生産性に与える影響を検証した。これは高度の専門的な能力を有する外国人材の受入れの促進のための、高度人材に各種の出入国管理上の優遇措置を与える制度である。高度人材は、2012年に導入された「高度人材ポイント制度」を活用することで、就労ビザを取得でき、日本で働くことができる。外国人労働者比率が地域の労働生産性や賃金に与える影響を見た先行研究はあるが、外国人労働者の受け入れ政策が地域の労働生産性に与える影響に注目した研究は日本ではみられない。
 分析においては、2011~2018年の都道府県のパネルデータを用いた。各都道府県の高度外国人材比率と外国人労働者比率に着目し、どういう地域の高度外国人材受け入れが労働生産性を高める傾向にあるか固定効果分析を用いて調べた。外国人労働者に関するデータは、厚生労働省の外国人雇用状況から、その他のデータは政府統計を参照した。分析の結果、両地域において高度専門職の創設の労働生産性への影響は有意ではなかった。分析結果の考察として、以下の2つが言える。第1に、高度外国人材比率の地域間格差が大きく、地域特性を顧みない全国一律の政策は効果が出ないかもしれない。第2に、外国人労働者数がそもそも少なく、高度専門職の創設の労働生産性に与える影響が観測しにくいということである。
 本研究の課題として、高度外国人材が持つ知識や技術を変数に体化できていないこと、都道府県レベルの分析で操作変数法による政策効果の厳密な因果識別ができていないことがあげられる。しかし、都道府県別のパネルデータを作成して、因果識別の標準的な計量分析手法を用いて、どのような地域で高度専門職の創設が労働生産性を上昇させるかを検証したのは独自の貢献であると言える。政府が、ポストコロナで日本での労働を希望する外国人労働者をどう受け入れていくのか注目したい。

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