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24期生 大野 倫太朗

ふるさと納税制度改正の子牛市場価格への影響:
せり市場ミクロデータによる地域間比較分析

 ふるさと納税制度は、2015年の制度改正を機に、これまで地方自治体に多くの収入をもたらした。一方で、ふるさと納税制度の問題も浮上している。保田(2019)は、地域外への販拡は、これまでアクセスのなかった顧客層にリーチできるようになり、外貨獲得を生み出し、域内GDPの向上に資する一方で、自治体と事業者の利害一致については、潜在的な落とし穴があり、返礼品市場から卒業する事業者が出てくると、自治体に入るふるさと納税の寄付金収入が落ちる可能性があると指摘する。このように、ふるさと納税に関する記述的・定量的な調査・研究も蓄積されている。しかし、ふるさと納税制度改正と地域経済や地方産品の2つをつなぎ合わせた定量的なエビデンスがない。
 そこで本稿は、2015年度のふるさと納税制度改正に着目し、改正前後の数年間にわたり、ふるさと納税制度の恩恵を大いに享受してる都城と対照的な高千穂に着目し、相互に独立な都城地域家畜市場と高千穂家畜市場のパネルデータを作成し、因果識別の標準的な計量分析手法を用いて、ふるさと納税制度改正の子牛せり価格への影響を定量的に明らかにするとともに、筆者の出身である宮崎県に多少なりとも貢献することを目的とする。
 結果としては、制度改正後の2015年に都城地域家畜市場の子牛せり価格は、有意に上昇しないという予想に反するものとなった。これは、分析の対象が制度改正直後までの期間で行っているため、子牛せり価格がすぐに反応しなかった可能性がある。また、観測数があまり多くないのに対し、交差項が多く、交差項の相関が高くなっていることが、有意な結果が出ない要因となっている可能性がある。
 しかし、このような課題はあっても、ふるさと納税制度改正を対象に、因果識別を可能とする分析手法によって、ふるさと納税制度改正の子牛せり価格への影響を定量的に明らかにしたことは、本研究の独自の貢献である。本研究を1つの出発点として、ふるさと納税制度と返礼品や地域経済に関する実証研究が大きく発展することを期待する。

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