25期生 関 紗花
機能性表示の導入がブランド価値に与える影響
我が国は超高齢化という社会問題に直面しており、健康寿命の延伸の重要性から、健康・免疫に対する関心が高まっている。その中でも近年は「食」に焦点を当てたヘルスケアに関連する市場、すなわち健康食品市場は拡大・成長を続けている。パッケージに有効性や安全性の表示が許可された食品は保健機能食品と呼ばれ、その中でも特定保健用食品や機能性表示食品は企業にとって画期的な制度といえる。本研究では、特定保健用食品と機能性表示食品の表示がブランドの市場シェアに与える影響について検証する。
本研究では、2010年度から2021年度の12年度分のパネルデータを用いて固定効果分析を行った。茶系飲料とヨーグルトの市場を選定して『飲料総市場マーケティングデータ』及び『ヨーグルト・乳酸菌飲料の市場分析調査』に掲載されている32ブランドを分析対象とした。各ブランドの市場シェアを被説明変数、新製品数と機能性表示商品数を説明変数とし、価格上昇率や売上高広告宣伝費率、売上高研究開発費率といった戦略変数をコントロール変数とした。加えて逆の因果性を考慮するため、業種全体の平均機能性表示商品数を操作変数として採用した。
本研究では、通常の新製品(機能性表示のない商品)の導入や機能性表示商品の導入が市場シェアをより上昇させるという仮説を立て検証を行った。主な分析結果はおおむね仮説通りとなったが、多機能商品として差別化された機能性表示商品は、通常の新製品と比較してブランドの市場シェアをより上昇させることが明らかになった。この結果の考察として、ブランド内のカニバリゼーションによって新製品の導入効果が過小に評価されていたが、機能性表示の付与という差別化された機能性表示商品の導入によって市場シェアがより高められると考えられる。
本研究は茶系飲料市場・ヨーグルト市場という具体的なカテゴリーを分析対象とし、機能性表示の有無が企業成果に結びつく影響を検証した点に新規性がある一方で、データの制約上32ブランドに限られており他ブランドや商品の退出に関するデータを取得できなかった点が重要な課題である。本研究が今後の食品分野、健康食品分野に繋がる研究になれば幸いである。