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25期生 湯原 古都

市町村の地方移住支援策の効果分析
―過疎関係市町村において有効な移住支援策の内容とは―

 近年日本では地方から都市への人口流出が続いており、地方の過疎化と共に地方経済の衰退、都市と地方の格差拡大が社会的な課題となっている。このような東京一極集中の是正のための政策の1つである、各市町村が独自に策定した移住支援策を本稿では研究対象とした。具体的には、各市町村の実施する地方移住支援策が、当該自治体への移住促進効果をどの程度持つかを定量的に分析した。焦点は移住支援策の導入時期、支援策の内容の2点である。
 分析にあたって、市町村の実施する地方移住支援策の開始年度及び実施内容のばらつきを利用し、2000-2017年までの18年間について、過疎関係市町村724地域を対象にパネルデータを用いた固定効果分析を行った。説明変数に移住支援策の導入時期や支援策内容を、被説明変数に13大都市からの移動者数の実数値及び割合を用いた。
 主な結果を2点挙げる。1点目だが、支援策の内容を問わない場合、移住支援策の導入による移住者の増加は確認できなかった。また早期に支援策を導入した地域に限定しても、移住者の増加は見られなかった。これは、転入者数減少が予測される/起きている地域において、移住支援策が導入される傾向にあるという逆の因果を捉えている可能性がある。2点目だが、移住支援策の中で、子育て支援を導入する地域では、転入者数が統計的有意な水準で増加した。要因として、13大都市からの転入者の多くが20~30代の年齢にあり、それ故子育て世代に重点を置いた支援策が他と比較して効果を持ったと考えられる。
 本研究の新規性は2点ある。1つ目は、国内各自治体の移住支援策について、内閣府からデータを独自に入手・整備し、定量的に分析した点である。これまでの研究では、地域を限定した移住支援策とその効果分析が主で、国内の自治体を網羅するような移住支援策の効果分析は見られなかった。2つ目は移住支援策の内容をきっかけづくり/仕事/住宅/子育て分野の4つに分類しそれぞれの効果分析を行った点である。これにより、支援策内容別の有用性を比較することが可能になった。移住に関する社会的関心が高まる現在において、外国人を含めた移住者に関するデータの蓄積や、各自治体の支援策内容の経年変化について情報の蓄積が進むことが、今後の研究制度の向上のために望まれる。

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