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　近年日本では、アイドルグループを中心として新曲CDに特典をつける商法が主流であり、これにより日本国内のCDの売り上げ枚数が大きく向上している。本研究では対面イベント特典やオンラインイベント特典がオリコンシングルランキングの最高順位、ランクインした週数の増加に影響を及ぼすこと、そしてアイドルの活動水準によってそれらの影響に差が存在することを検証する。
　本研究では、2017年10月から2023年10月までの6年間のパネルデータを用いて固定効果分析を行った。オリコン週間シングルランキングにランクインされたCDを分析対象とした。週間シングルランキングにおける最高順位とランクインした週数をそれぞれ自然対数変換したものを被説明変数に、対面イベント特典、オンラインイベント特典、抽選系特典の実施状況を説明変数とした。この際、対象アイドルの活動水準の違いをコントロールするために、筆者の主観でアイドルグループを3つの区分に分類した。
　本研究では、CD発売前に対面イベント特典、オンラインイベント特典が付くことを発表したほうが、特典なしと比較してオリコン週間シングルランキングの最高順位が高くなり、ランクインした週数が長くなるという仮説を立てて検証を行った。分析結果は、最高順位に関しては対面イベント特典、オンラインイベント特典ともに仮説通りに、ランクインした週数については対面イベント特典のみ仮説通りであった。また、活動水準の高いアイドルは活動水準が低いアイドルと比較して、対面イベント特典、オンラインイベント特典が週間シングルランキングの最高順位上昇、ランクインした週数の延長に影響を及ぼすという仮説も検証した。分析結果は、最高順位においては仮説と反する結果となり、ランクインした週数については対面イベント特典のみ仮説通りとなった。この結果は、集客が見込めないアイドルグループがオリコン週間ランキング成績向上のため、対面イベント、オンラインイベント特典をつけるという逆の因果を捉えている可能性がある。
　本研究はシングルランキングの成績をCD売り上げ枚数の代理変数とし、特典がCD売り上げに与える影響を計量的に分析した点に新規性がある。一方で、アイドルグループの人気、認知度、宣伝・情報伝達方法をアイドルグループ個々に固有で変化しないものとしている点が課題である。