26期生 坂本 一真
学習塾の退出要因分析
現在の日本では、多くの児童生徒が学習塾に通っており、今や学習塾は日本の教育になくてはならないものとなっている。しかし、日本の学習塾業界は、大手企業の寡占化が進行しており、規模の小さい学習塾にとって厳しい状況になっていると言われている。では、生存できる学習塾とそうでない学習塾の違いは何なのであろうか。これまで、企業の存続に関する定量的な分析は数多く行われてきたが、学習塾に焦点を当てたものは前例がない。そこで本研究では、学習塾が退出する要因を、「進学塾」、「補習塾」、「総合塾」といった、各学習塾の特性に注目して分析する。
本研究では、学習塾を運営する全国の法人を対象に、cox比例ハザードモデルを用いた生存分析を行った。分析にあたって、『学習塾白書』から全国の学習塾法人に関する8年分のパネルデータを取得した。また、学習塾以外の産業における企業の存続の傾向や、「進学塾」、「補習塾」それぞれの特徴を踏まえ、次の4つの仮説を立てた。①参入が遅いほど、学習塾の倒産確率が高くなる。②学習塾の本部がある都道府県の教育への関心が低いほど、その学習塾の倒産確率が高くなる。③「補習塾」に分類される学習塾は、「進学塾」に分類される学習塾に比べて、参入が遅いことによる倒産確率の増加幅が小さい。④「補習塾」に分類される学習塾は、「進学塾」に分類される学習塾に比べて、本部がある都道府県の教育への関心が低いことによる倒産確率の増加幅が大きい。
分析の結果、4つの仮説全てについて、有意な結果を得ることはできなかった。その理由として、『学習塾白書』に掲載されている学習塾法人が、全国の法人のうちごく一部であり、比較的大手の学習塾に限られるためではないかと考えられる。実際、本研究で分析対象となった学習塾法人のうち、分析期間中に倒産した法人はわずか36社である。
こうした問題点はあるものの、日本を含む東アジアなどに特有の産業である学習塾の退出要因について定量的な分析を行ったという点で、本研究の貢献はあると考えられる。本研究が、教育産業における今後の研究の一助となることを期待する。