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27期生 羽根 洸至

地方鉄道の廃線要因と第三セクターへの移行要因について

 近年日本において問題視されている人口減少と過疎化の問題に加えて、自家用車での移動が主となるモータリゼーションの影響も受け地方鉄道の営業成績の悪化は著しく、その廃線が相次いでいる。こうした不採算に苦しむ地方鉄道の解決策として、事業者と国や自治体が共同出資をして鉄道の運営を行う第三セクターへの移行が注目を集めている。本研究では、地方鉄道の廃線要因と第三セクターへの移行要因に関する分析をロジスティック回帰モデルと多項プロビットモデルを用いて行った。
 地方鉄道の廃線要因や第三セクターへの移行要因に関する先行研究は存在するが、多くは地方鉄道の営業成績の観点からの分析となっている。本研究では、地方鉄道の沿線自治体に着目して分析を実施した。また地方鉄道の第三セクターへの移行過程には、まず地方鉄道を廃線とするか存続とするか、続いて存続とする場合は第三セクターに移行するか移行しないかという2段階の過程が存在する。しかし先行研究では、存続している地方鉄道のうち第三セクターへの移行要因に関する分析に留まっているため、本研究では上記の2段階を扱った。
 結果として地方鉄道の廃線を促進する要因としては、「地方鉄道の継続年数が長い」「沿線自治体の財政力が低い・昼間人口比率が高い・人口密度が大きい」ことが明らかとなった。第三セクターへの移行を促進する要因としては、「地方鉄道の経常利益率が高い・継続年数が長い・輸送人数に占める定期通学者の割合が低い」「沿線自治体の人口密度が高い」ことが明らかとなった。
 本研究には課題がいくつか存在する。1つ目は本研究の分析対象が地方鉄道と廃線となった一部のJR路線にのみ限られており、現在も存続しているJR路線に関しては扱うことが出来ていないことだ。地方鉄道にとっての廃線は多くの場合そのまま廃業を意味するが、JRにとって地方の一部路線の廃線は経営の収益性向上のために必要不可欠である。この点から地方鉄道とJRの廃線の意味合いは異なるものの、本研究では両者を同一のものとして扱ってしまっている。2つ目は沿線自治体のデータに関して5年ごとの国勢調査のデータを用いているため、説明変数が一定の変化率で変化すると仮定している点だ。自然災害などの特定のイベントが人口に大きな変化を与えることも考えられるが、上記の方法ではその考慮を行うことができていない。そのため人口など毎年のデータを確保することが出来れば、より詳細な分析を行うことが出来る。

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