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27期生 早川 裕人

大学生・大学院生の就職活動が学修時間に与える影響

 本論文では内閣府政策統括官寄託の「就職・採用活動開始時期変更に係る学生の就職活動調査,2016」、そして「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査」の2017年度と2018年度の個票データを使用し、学生が就職活動によって受ける学修時間への影響を順序ロジットモデルによって分析している。これは、就職活動の「早期化」、「長期化」が進行する現状において、政府が定める就職活動スケジュールのもと、学生が学修時間を確保できているかどうかを実証分析する目的がある。加えて、就職活動における学修時間への影響、特に大学院生も対象に含めて分析したものは存在しない。このような新規性を提供することも本論文の目的である。
 また、分析に際し学部生と大学院生や性別の違いを考慮するために、交叉項を用いて分析を行い、これらの違いを比較し論じている。
 分析の主な結果として、理系大学院生であることは就職活動中における学修時間に負の影響を与えることを確認した。就職活動の長期化や早期化の傾向が強まる中で、特に専門的分野の研究に時間を割く必要のある理系大学院生に着目して、就職活動中の学修時間への影響を実証分析できたことは、就職活動スケジュールや採用を行う企業の姿勢の見直しにつながる独自性があるといえる。また、学部生よりも大学院生の方が、そして、女性、特に理系の学部生である女性の方が就職活動によって学修時間が損なわれていることを確認した。
 しかし、具体的な現状の就職活動に対する政策等の提言に至らなかったのは課題として残っており、就職活動スケジュール変更前後のデータを含めて分析できれば、就職活動スケジュールと学修時間の関連性を示すことができ、政策等の提言に繋がったと考察している。

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