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28期生 松枝 雄⼀郎

中期滞在型賃貸(マンスリーマンション)契約市場における価格決定要因分析

 マンスリーマンションとは、ホテルなどの短期宿泊市場と⼀般賃貸市場の中間領域に位置する財であり、敷⾦・礼⾦不要で家具家電付きという特徴を持つ。近年、法⼈需要やインバウンド需要の増加に伴いその市場規模は拡⼤傾向にある。しかし、この市場は内⾒なしでオンライン契約が完結するケースが多く、情報の⾮対称性が⾼いにもかかわらず、価格決定メカニズムに関する実証研究は⼀般賃貸やホテルと⽐較して著しく不⾜している。そこで本研究では、札幌市の物件掲載データを⽤いて、物理的な製品差別化(設備)および運営事業者のブランド⼒が賃料に与える影響をヘドニック・アプローチにより分析する。これにより、情報の⾮対称性が⾼い市場において、何が品質シグナルとして機能しているかを実証的に明らかにする。
 本研究では、被説明変数として「1⽇当たり家賃」および管理費・光熱費等を含んだ「1⽇当たり総⽀払額」の2種類を設定し、ポータルサイト「WEEKLY MONTHLY」から収集した北海道札幌市の物件(2025年11⽉1⽇時点)のクロスセクションデータを⽤いた分析を⾏った。説明変数としては、先⾏研究および市場特性を踏まえ、標準設備・追加設備の充実度を⽰すスコア、運営事業者ダミー、および築年数や最寄駅距離などの物件属性指標を設定し、最⼩⼆乗法による推定を⾏った。
 分析の結果、設備による製品差別化については、標準的な家具・家電設備の充実が賃料プレミアムを⽣んでいないことが明らかになった。特に家賃モデルでは有意に負の影響が⽰され、競争⼒の低い物件が空室対策として設備を導⼊している埋没費⽤化の可能性が⽰唆された。⼀⽅、運営事業者のブランド⼒については、特定の⼤⼿事業者ダミーが⼀貫して正に有意となり、同条件の物件と⽐較して顕著な価格プレミアムを実現していることが⽰された。これは、情報の⾮対称性が⾼い環境下において、物理的な設備スペックよりも、ブランドによる品質保証が価格形成の決定要因となっていることを意味する。
 本研究の課題として、特定のポータルサイトの掲載価格に基づく分析であり、実際の成約価格や稼働率を考慮できていない点が挙げられる。また、分析対象が札幌市に限定されているため、異なる需要構造を持つ⼤都市圏などへの外的妥当性の検証や、設備変数の質的な違いを考慮した分析が今後の課題である。

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